ぬぬさぁーの話

  • vol.01

    一布二布(チュヌータヌー)

    『一布二布織りなさい』
    この言葉は僕が織りを始めた時に、オバアから言われた言葉です。
    13メートルという長さの着尺を織る際、順調に進まない時が多々あります。

    経糸が切れたり、絣を合わせるために微調整をしたり、他にも気にかけることが沢山あります。

    気持ちは一日に2メートル3メートルを織りたいんですが、中々思うように行きません。

    頑張っても1メートルが限界で、イライラする日々。
    ある日そんな僕のイライラを見て、オバアが「あんたは一日に2メートルとか3メートル織ろうとしてるんでしょ? そうじゃないよ。一布二布織りなさい。」と声をかけてくれました。

    一布二布とは長さにすると20センチくらいのこと。
    「一日に沢山織ろうとしないよ。出かける前の5分とか作業の合間の10分とか機に座って一布織るんだよ。そしたら一反織り上がるから。」

    それはオバアも昔から親に言われてきた言葉だそうです。
    この言葉を聞いてから僕の織りの仕事に対する姿勢が変わったように思います。

    目の前の一布二布を織ることに集中する。コツコツ積み重ねれば一反になる。時間がないから織れない(できない)ではないんだなと。
    人生訓のようで、今でも丸正の仕事の中で大切にしている考え方です。

     

    (大城 幸司)

    *ぬぬさぁーとは布を作る人という意味の方言です。

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